丹波ワインのふるさとは、のどかで緑豊かな里山が広がる京丹波町。そこは京料理を支える、滋味深い京野菜のふるさとでもあります。丹波の美しい山と水に育まれた季節の京野菜を、ワインと楽しみながら、その魅力をお伝えしましょう。


今回は京都伝統の夏野菜「伏見唐辛子」「賀茂茄子」をご紹介しましょう。京都の暑い夏にも負けず、元気に育つ京の夏野菜は栄養もたっぷり。丹波ワインの爽やかな赤のスパークリング「サペラヴィ」とフレッシュな白ワイン「すめらぎ-皇-」と楽しみ、暑い夏を乗り切りましょう。

●水が美しい上賀茂で生まれた“なすの女王”
賀茂茄子

賀茂茄子は、まんまるの形をしている丸なすの一種。今から約100年前に水が美しく上賀茂神社でも有名な、上賀茂地区で作られたことが始まりといわれます。九条ねぎや聖護院だいこんと並び、「京の伝統野菜」として認定され、“なすの女王”とも呼ばれています。

大きさは直径12~15cm、重さは250~300gほど。女性の片手を広げてちょうど掴めるようなサイズ感です。果皮は光沢があり、肉厚な果肉はよく引き締まっていて歯ごたえがありますが、加熱するとまったりとして甘味があり、滋味深い美味しさが感じられます。

●緻密な肉質 油の吸収率少なくポリフェノールが豊か

賀茂茄子は肉質が緻密なため、煮炊きすると柔らかい一方で、煮崩れせず適度な食感を残すことができます。また、揚げ物にもよく合いますが、一般的な茄子と比べて油の吸収が少ないためより健康的。皮には豊かなポリフェノールを含んでいます。

●和洋中華と幅広く 食感を楽しんで

定番のみそ田楽や揚げ出し茄子をはじめ、煮物や浅漬け、フリットやサラダなどにも。和洋中華と幅広い料理と楽しめます。いずれにしても、大きめにカットしたり厚みを残すなどして、賀茂茄子の食感を堪能できるように調理しましょう。

【賀茂茄子のヨーグルトソース和え×すめらぎ(白)】


ヴォリューム感のある賀茂茄子をヨーグルトソースでさっぱり仕上げた清涼感のある一品。切れのよい軽快な酸味と柑橘系の爽やかな香りを持つすめらぎのワインと合わせて、夏ならではのマリアージュをお楽しみください。

    1. 賀茂茄子を縦に二等分する。
    2. 中身をくり抜いて、皮は器にするため冷水に漬けておく。
    3. 中身は大きめのサイコロ状に切り、水に漬け、あく抜きをする。
    4. キッチンペーパーなどで③の水気を取り、米油を薄く引いたフライパンで軽く焼き、日本酒少々を加えてフタをして蒸し焼きにする。
    5. 茄子に火が通ったら、軽く塩コショウして、冷ます。
    6. プレーンヨーグルト大さじ3に、純米酢大さじ1、塩コショウを加えてヨーグルトソースをつくる。
    7. 茄子をヨーグルトソースで和え、冷蔵庫で30分ほど冷やす。
    8. 茄子の皮の器に⑦を盛り、スダチ1個の皮を 摺りがねでおろしてトッピングする。

●江戸時代から栽培する京伝統の甘唐辛子
伏見唐辛子


伏見唐辛子は、江戸時代から京都の伏見地区で栽培されてきた甘唐辛子の一種。現在は伏見地区だけでなく丹波地区でも豊富に栽培されています。辛みがないので、別名「伏見甘(ふしみあま)」とも呼ばれ、独特な風味と甘さが魅力です。

皆さんがよく知る京都の唐辛子に万願寺唐辛子がありますね。万願寺唐辛子は昭和初期に、この伏見唐辛子とアメリカから導入したピーマン「カリフォルニア・ワンダー」が自然交雑されて生まれたもの。伏見唐辛子は万願寺唐辛子と比べると、小ぶりで細長く皮も薄いのですが、香りは高く繊細な味わいが感じられます。

●ビタミンC、E、βカロテンが豊富 美肌や疲労回復効果も

旬は7月から9月。太陽をいっぱいに浴びて育つ伏見唐辛子は栄養も豊富です。特に美肌を保つビタミンC、強い抗酸化作用のあるビタミンE、さらに体内でビタミンAに変換されるβカロテンの含有量が豊か。そのため、京都では江戸時代から夏風邪の予防や疲労回復に食されてきました。

●チリメンジャコや肉みそに合わせて

中でも、チリメンジャコと伏見唐辛子を炒めて煮た「ジャコと唐辛子の炊いたん」は夏の京都定番のおばんざいです。他にも鮮やかな緑と張りのある食感を活かして炒め物、焼き物、天ぷらにも。味噌や肉との相性もよいので、ひき肉などと一緒に甘辛く炒めても美味しいですね。幅広くお料理に使ってみましょう。

【伏見唐辛子の鶏ムネ肉の詰め物×サペラヴィSaperavi スパークリング2018】


サペラヴィの野性味あふれる赤い果実の風味が、伏見唐辛子の優しい辛味を引き立て、甘みそが食欲を掻き立てます。
伏見唐辛子の柔らかな皮と鶏ムネ肉のなめらかな食感がマッチ。そこにサペラヴィの繊細なテクスチャーが呼応して、料理とワインが余韻まで寄り添います。

レシピ(二人分)

    1. 伏見唐辛子6本の頭の方を切り落とし、中の種を取る。
    2. 鶏ムネ肉のひき肉70gに、水で戻したシイタケのみじん切り(四分の一枚分)、塩コショウ、片栗粉小さじ1を加えて餡をつくる。
    3. 伏見唐辛子に鶏肉の餡を爪楊枝などで詰め、片栗粉で落とした頭の部分をくっつけてから米油を薄く引いたフライパンで軽く焼き、日本酒少々を加えてフタをして蒸し焼き(弱火で3分ほど)にする。
    4. 八丁味噌ソース*を引いた皿に、③を載せる。

*八丁味噌ソース
岡崎市八帖町でつくられる八丁味噌大さじ3に、酒大さじ3、味醂大さじ3を加え、火にかけて練る。

レシピ監修:細井恵津子(ワインと食のジャーナリスト)
撮影:橋野伸一

すめらぎ-皇-(白) 750ml

夏の涼を癒し、爽やかにして繊細なミディアムボディの辛口白ワイン。兵庫と山梨のシャルドネと甲州を巧みにブレンドし、日本の和食材との相性を追求して醸造されました。美しく豊かな酸と柑橘系の爽やかな香りが融合し、フレッシュさの中にも凛とした上品な深みが感じられます。醸造酢、醤油、塩など日本古来の調味料、伝統の京野菜、旬の魚介類を使った和食全般と幅広く寄り添います。お料理にも、すだち、かぼす、レモンなどの柑橘果汁をサッと絞っていだだくと、ワインがより楽しめます。また夏はヨーグルトやフレッシュチーズを使ったサラダとも楽しめ、汎用性と懐の広さを感じさせるワインです。
 
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京丹後産サペラヴィスパークリング

京都丹後の藤原氏が栽培した、ジョージア原産サペラヴィの品種を100%使用。日本では珍しい赤のスパークリングワインです。京都丹後産のサペラヴィは、北欧系の品種らしく酸度が非常に高く、色調が濃い一方で、タンニンは少なくまろやか。そのためスパークリングに仕上げることでその個性を豊かに発揮しています。
イタリアのランブルスコを彷彿させるほのかな甘みと酸味、かつ山葡萄のような滋味深い風味を備え、鶏肉や豚肉のソーセージ風パテや鹿肉とも好相性。青いハーブのような芳香も感じられるため、京都産の甘唐辛子に肉みそを合わせた料理、チンジャオロースなどの青みを使った中華料理ともピッタリ。夏の食卓を華やかなに彩る一本として、ホームパーティの乾杯の一杯にもお勧めです。 

 
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伴良美
伴 良美(ばん・よしみ)
ライター&ワインエキスパート。映画、食、旅を中心に執筆。ワインと食の情報誌「ヴィノテーク」、北海道新聞、岐阜新聞などの取材記者としても活躍。世界の銘醸地や映画の舞台を訪ねた連載コラムに、フジサンケイビジネスアイ「世界銘酒紀行」「名画の舞台」のほか「男と女 名画とお酒」「シネマの名言」などがある。


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