日本料理と日本酒 惠史(さとし) 

一枚板のカウンターに広がる静の美

京都市内の閑静なエリアに佇む「惠史(さとし)」は、杉の一枚板を使用したカウンター7席と、4名掛けのテーブル1卓のみの日本料理店。カウンター越しに料理が仕上がる過程を目の前で楽しめる、落ち着いた和の空間です。

店主の保科知史さんは、京都の老舗料理旅館「鶴清」で料理人としての第一歩を踏み出し、続いて老舗料亭「和久傳」で料理長を務めるなど、十七年にわたる経験を積んできました。その後独立。
「人と同じことはやりたくない」という信念のもとに、「京都は和食の名店が多いからこそ、自分らしさをどう表現し、差別化していくかを常に考えています」と語ります。

40代から60代の常連客が中心で、多くの人がその独自の世界観に魅せられ、繰り返し足を運ぶといいます。

名物・先付八寸が生む驚きと愉しみ


今や惠史の代名詞ともなっているのが、季節を映す先付八種。
「違棚(ちがいだな)」と呼ばれる盆栽や器の飾り棚を巧みに使い、和の情緒を立体的に表現します。小皿に盛りつけられた酒肴八寸が並ぶ光景は、まさに圧巻の一言。

「旬の食材を使っているので、八寸の内容は毎回違います」と保科さん。

取材時(八月)には、鱧の子のゼリー寄せ、鯖のへしこ、蛸柔らか煮、卵黄味噌漬け、鴨ミンチ味噌、秋刀魚時雨煮、干し貝柱、甘海老塩麹和えという八種が並びました。一品一品に季節の香りが漂い、訪れるたびに新しい感動をもたらしてくれます。

旬の日本酒と、器が語る「和の時間」

「日本酒もメニューはありません」と保科さん。その理由を尋ねると、「日本酒にも旬があるからです。季節ごとにお酒を変えることで、食材と同じように旬を感じていただけるんです」と答えます。
春の春酒、夏の夏酒、秋のひやおろし……。料理と日本酒がともに季節を語る、まさに“和”の象徴です。

さらに注目すべきは、器や酒器へのこだわり。保科さんは自ら古物商の許可証を取得し、骨董オークションで江戸時代の源内焼、淡路島の民平焼、三田青磁、古伊万里などを収集。料理を思い描きながら選び抜いた器が、食卓を一層豊かに彩ります。

「欠けた皿も、角度を工夫すれば自立して美しく見えるんです。誰もやっていないことをやるのが好きなんです」と微笑む保科さん。
唯一無二の器に盛られた料理が、惠史ならではの体験を生み出しています。

メニューのないおまかせ

懐石コースは13,200円から。さらに人気なのが、5,500円のおまかせ三品のあと、アラカルトを楽しむスタイルです。

「毎朝市場に出向いて、その日の食材を見て決めています。だからメニューはありません」と保科さん。

飲み物もまた京都らしさへのこだわりが光ります。ビールは京都産、ワインは京都丹波ワインを愛用。
「甘くなくてすっきり飲みやすい」「和食との相性が良い」と評判で、特に白ワイン「すめらぎ」は人気。
「甲州がブレンドされていることで、和の食材との相性が引き立ちます」と語ります。

食の架け橋

2022年のウクライナ戦争をきっかけに、保科さんは日本へ避難してきた方々に懐石料理を無償提供。その出会いから、彼女たちをスタッフとして迎え、店内イベントではウクライナ料理を提供することもあるそうです。
「自国の料理を作ることで、少しでも明るい時間を過ごしてもらえたらと思っています」。京都の和の心とウクライナの温かい味―。惠史は今、国や文化を越えたやさしい絆の場としても、人々を包み込んでいます。

取材後記
繊細な料理、選び抜かれた器、季節を感じるお酒――。そのどれもが、保科知史さんの「誰もやっていないことをやる」という信念から生まれたものでした。京都の静かな一角で味わう、唯一無二の和の体験。それが「惠史」という店の真髄なのかもしれません。

このお店が推薦する丹波ワイン
すめらぎ -皇- (スパークリング) 750ml
すめらぎ -皇- (スパークリング) 750ml
タイプ:スパークリングワイン
味わい:辛口
容 量:750ml
葡萄品種:甲州、シャルドネ
葡萄産地:山梨、山形
アルコール:11%

 

 
このワインが気になる

 日本料理と日本酒 惠史(さとし) 

【お  席】
カウンター7席、テーブル席4席
【営業時間】
ランチ12:00~14:00(予約のみ)/ディナー17:30~23:00
【定 休 日】
不定休
【所 在 地】
京都府京都市中京区宮木町471-2
【電  話】
075-708-6321
【ご 予 約】
ご予約可能
【w e b】
https://www.kyoto-satoshi.com/

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